--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アイノスフィア プロローグ

2009年08月19日 16:29

・・・物心ついたときには、私は「あの子」と一緒だった。


まだウォーロックに転職したての私は、あの子にいつだってついていっていた。


「ほら、雪弥ちゃん。こっちだよ。」

「まってーっ」

「さぁ、今日はどこに一緒に行こうか。」

「うーん、私・・・まだ弱いから・・・。」

私はいつだって、あの子についていった。

あの子はもう職服を着るほどに成長していて、

私は早く追いつきたいといつも思っていた。

「大丈夫、私が守ってあげるから。だから、一緒に行こう。」

いつもあの子は私にそう言ってくれて、私はそれだけで安心できた。



「雪弥ちゃん、最初はどんどんMAGを上げて、魔法一撃で敵を倒せるようにしようね。」

そういいながら、敵に向かって弓を射る。

「うん、わかった!」

私は素直にうなづいて、彼女のあとを追う。

「ブラックウィドウ~~」

私の弱い魔法も、敵に当たる。

倒しきれないときは、全部あの子が倒してくれる。


周りがきらきらっ、と光り、私はレベルが上がった。

「やったあ、上がったね!」

「うん、ありがとう!」

あの子は私の頭をなでてくれた。

「雪弥ちゃんがもっともっとレベルが上がって、ライフテイクを覚えたら、もっともっと前衛さんの
役に立てるようになるからね。」

「うん!そうしたら私、ずっと。。。と一緒にいるからね!」

私がはしゃいでそういうと、あの子は、悲しそうに微笑んだ。

「わたしはいいの。もっと色んな人と冒険しなきゃ。」

「うーん、でもやっぱり、一番は。。。だもの!」


そういうと、あの子はとっても嬉しそうに笑って、また私の頭をなでてくれた。

「ありがとう。」


私は、あの子が大好きで大好きで、いつだって一緒に居たかった。

もっと強くなって、あの子と一緒にどこまでも冒険をするんだと、そう心に決めていた。





記憶は昔のものだからか、いくつかあいまいな部分はあった。

だけど、私の記憶の中では、いつだってあのこと一緒で、いつだって、どこだって一緒に居て、
片時も離れたことなんてなかったように思う。



いつしか私は2次職に転職するほどになっていた。
でも、やっぱりいつだってあの子と一緒で、
私が転職した日も、あの子は満面の笑顔で、私を抱きしめてくれた。


私はあの子が大好きで、大好きで

抱きしめたこの腕を放したくないとすら願った。



二人、離れたくないと・・・・・・・・・・・


私は、あの子に自分を重ね、あの子も私を受け入れた。
二人の気持ちは同じだと、思っていた。


お互いに、お互いが大事で、一番で、離れたくないんだと・・・・


そう、思い込んで・・・居たのかもしれない。





そういえば、一緒におうちで遊んだことがなかったなーと、あるときふと思った。

いつもお外で狩りばかりだったから。


私は、あの子を自分の家へと招待した。


最初はあの子はとても嫌がっていたけど、遠慮だと思って無理やり連れてきた。

おうちに帰ると、姉様は二人とも、でかけているようだった。


私は自分で、とっておきの紅茶を淹れ、あの子をもてなした。

次第にあの子も笑顔になり、私はとても嬉しかった。


私はたまらなく嬉しくなって、席を立ってあの子に近づき、
後ろからぎゅっと抱きしめた。

「ずっと、一緒に居てね・・・。・・・だいすき、だいすき。・・・だいすき。」

沢山心を込めて、そう言った。

あの子が口を開きかけた途端、

ドアが開いた。


「ただいまーっ。

・・・あれっ、なんだ、雪弥ちゃん帰ってたの?」


一番上の、オミ姉様だった。
私は慌てて、あの子から離れ、姉様にあの子を紹介しようとした。

「あ、お、おかえりなさいオミ姉様。この子はね、私のずっと仲の良かった・・・」


「一人で紅茶2つも出して、おままごと?」


「・・・・・・・・・え?」

瞬間、世界は暗転した。


「「雪弥ちゃん!?」」

それは、誰の声だっただろう・・・・・。


私の意識は、一瞬で遠のき、記憶が薄れていった・・・・・・・・・。














がばっ!


飛び起きた私を見下ろしていたのは、心配そうな顔のオミ姉様と、二番目の姉の雪姉だった。


「あ、気づいた・・・」

「大丈夫?雪弥ちゃん」


私は、部屋を一瞬見回し、叫んだ。


「あの子は・・・・・リルムは、どこ!?」

オミ姉様と雪姉は一瞬驚き、二人顔を見合わせた後、
私のほうを見て。

悲しそうな、顔をした。


「あの子は!?リルムはどこに行ってしまったの?
ずっと、ずっと私と一緒に居たのよ!?」

私は混乱していた。


すると、雪姉が悲しそうにつぶやいた。

「リルム・・・ね。

あの子は、さ。

もう・・・・居ないよ。」



一瞬、何を言われたのか判らなかった。


あの子が、リルムが、もう、居ない・・・?


何があったの?


どういう事なの?


さっぱり判らなかった。


とにかく、ここにあの子は居ない。



「探しに・・・・・・・行かなきゃ!!!」


私はベッドから飛び降り、家を飛び出した。


「あっ、まって、雪弥ちゃ・・・!!」

姉様たちが止めるのも、もう耳に入っていなかった。


リルムと居た場所、思い出の地、狩場、街、私は走り回った。

だけど、

どこにも、

リルムの姿は、

なかった。



私は、ひとりになってしまったんだ――――――――――




信じられなくて、意味がわからなくて、

何日も何日も同じところをぐるぐると歩き回った。

家に帰れば姉様たちが暖かく迎えてくれる。

だけど、

私の心は、

その日から空虚になってしまった。



ねえ、リルム、あなたはどこに行ってしまったの?



もう、居ないの。


私はひとりになってしまった・・・・・。


ねえ、


私は、


もう、


「わたし」が・・・・・


要らないよ・・・・・・・・・・・・・・・・・。




私の足は、ふらふらと、アクロポリスから遠くのダンジョンへと、向かっていた・・・・。


どこへ・・・。








<アイノスフィア プロローグ 完>

→この続きが、C76の新刊になります( ´ー`)ノ
スポンサーサイト


コメント

  1. | |

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

  2. ゆきおみ | URL | -

    管理者のみ 様>
    読んで頂いてありがとうございます(・∀・)
    けっこう実は低レベル時代の話・・・というわけでもないんですよ(笑)
    こういう(プロローグ時代の)経験があって、本の本編につながって。
    ソレが未来へ続きます。
    エピローグでは、プロローグで出た謎を、本編を経てなお謎のままな
    部分を書こうと思ってます。
    本編は本編でひとつのお話なんですけどね。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://yukiomipuniko.blog94.fc2.com/tb.php/107-94c845a8
この記事へのトラックバック



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。